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日外会誌. 111(4): 268-274, 2010


症例報告

自施設における生体肝移植103例の適応と成績

1) 国立成育医療研究センター 移植外科
2) 国立成育医療研究センター 小児外科

笠原 群生1) , 阪本 靖介1) , 重田 孝信1) , 福田 晃也1) , 松野 直徒1) , 田中 秀明2) , 北野 良博2) , 黒田 達夫2)

I.内容要旨
目的:小児肝移植医療はその開始から20年が経過し,良好な成績が報告されている.本邦でも2010年7月から,小児脳死肝移植医療が実施され,外科医の肝移植適応への関与が増えることが予想される.自経例で肝移植適応·時期·成績を検討し,文献的考察を含めて報告する.
対象と方法:国立成育医療研究センターにおいて2006年11月から2009年9月までに生体肝移植を行った103例の小児症例について,移植適応,手術成績,感染症,拒絶反応等について検討した.
結果:対象疾患は胆汁うっ滞性肝疾患43.7%,代謝性肝疾患24.3%·劇症肝炎18.5%等であった.レシピエント年齢は生後1カ月から16歳で平均3.6歳,体重は2.8kgから63.8kgで平均14.4kgであった.1カ月以内の新生児症例が3例(2.9%),1歳以下の乳児症例が47例(45.6%),体重6kg以下の症例が15例(14.6%)であった.術後細菌感染症を30.1%に,EBV/CMV感染症を28.2%,17.5%に認めた.急性拒絶反応の頻度は33.0%,移植後リンパ増殖性疾患の発症はなかった.患者·グラフト生存率92.2%であった.
結論:経過観察期間は短いが小児肝移植は肝疾患患者にとって適応と実施時期を選べば安全な医療であると考えられる.

キーワード
小児, 肝移植, 生体肝移植


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