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日外会誌. 100(3): 261-264, 1999
特集
Barrett食道癌-基礎と臨床-
8.Barrett食道癌の治療-扁平上皮癌との比較-
I.内容要旨Barrett食道癌の治療にあたって同一部位に生じた扁平上皮癌との比較において生ずる以下のような疑問に付き考察した.①術式は同じでよいのか.②補助療法は同じでよいのか.③予後はどちらがよいのか.
①1972年から1998年6月までに当科で切除されたBarrett食道癌19例の考察および諸家の報告から,Barrett食道癌にはBarrett上皮の領域を越えて食道癌が多発する傾向はなく壁内転移の可能性も低いと考えられた.しかし転移再発の面からみるとBarrett食道癌のリンパ節転移再発の様式は同一部位に発生した扁平上皮癌と大差なかった.腫瘍の壁深達度とリンパ節転移との関係においても,sm癌では20%前後の転移率があると推測された.よって術式は腫瘍占居部位と深達度から扁平上皮癌と同様に決定すべきである.
②諸家のPhase ll studyにおける扁平上皮癌と腺癌の奏効率の差をみるとほとんどの報告で扁平上皮癌の奏効率の方が高いがこの差は化学療法単独より化学放射線併用療法において小さい傾向にある.Barrett食道癌の補助療法においては局所制禦の点からは化学療法よりも化学放射線併用療法に,化学療法ではPaclitaxelやCPT-11等の新たな抗癌剤に期待,注目が集まっている
③一般に食道扁平上皮癌よりBarrett食道癌の方が予後がよいと云われているがこの第一の理由はおそらくBarrett食道癌の早期発見傾向にある.食道扁平上皮癌と腺癌の予後を比較し,組織型の違いは有意な予後因子ではないという報告もある.Barrett食道癌あるいは食道腺癌のリンパ節転移率は扁平上皮癌より低い傾向にあり,その占居部位が扁平上皮癌より低位に分布するため頸部上縦隔を郭清しなくても根治的となる症例が多いといった要素は無視できないが,治療法は占居部位と深達度から食道扁平上皮癌と同様に決定すべきで,予後も決して油断できない.
キーワード
Barrett食道癌, 食道腺癌, 食道扁平上皮癌, 頸部上縦隔リンパ節転移, 頸部上縦隔郭清
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