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日外会誌. 99(8): 510-517, 1998
特集
臓器不全の病態と対策
7.虚血・再灌流障害と臓器不全
I.内容要旨再灌流障害とは,虚血の時期に起きた障害が再灌流とともにさらに進行する病態を表している.また,その際に発生する臓器障害は,虚血臓器そのものにとどまらず,虚血の範囲が広範であれば,そこから離れた遠隔臓器にも及ぶことが知られている.最近,再灌流障害の発生過程で好中球が重要な働きをしていることが注目されているが,そこにはその他にも血管内皮細胞,マクロファージ,フリーラジカルやサイトカインをはじめとしたメディエータが複雑に関与しており,再灌流障害の概念も,かつて注目された微小循環における“no-refiow phenomenon”といったものから大きく変化しつつある.再灌流障害の発生過程には,好中球の関与にみられるように,炎症にきわめて類似した側面があり,再灌流臓器の範囲が広く,全身の臓器障害を伴なってくるならば,その病態はより包括的な概念である“systemic inflammatory response syndrome(SIRS)”の観点から捉え直すこともできる.このように考えると,その結果として起きる全身の臓器障害は“multiple organ failure(MOF)”であり,再灌流障害と臓器障害には不可分の関係があることが容易に理解できる.再灌流障害を新たな視点でとらえると,急性循環不全後に起きる臓器障害も全身臓器の虚血後に起きる再灌流障害とみることができるし,移植臓器に発生する臓器不全も再灌流障害の一面を有していると考えられる.
このような新たな知見の集積とともに,再灌流障害に対する治療法は抗サイトカイン療法,フリーラジカルスカベンジャーなど,その病態に則したさまざまなものが考案されてきたが,いまだに臨床的には決定的なものはないのが現状である.現段階では,再灌流障害の病態を十分に理解したうえで,臓器障害の発生を早期に予測し,未然に予防することが唯一の治療法であると考えられる.
キーワード
再灌流障害, 臓器不全虚血, 好中球, 内皮細胞
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