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日外会誌. 99(8): 485-489, 1998


特集

臓器不全の病態と対策

3.臓器不全の発生とメ力ニズム

札幌医科大学 第1外科

浦 英樹 , 平田 公一 , 山口 浩司 , 桂巻 正 , 伝野 隆一

I.内容要旨
臓器不全を引き起こす原因病態は多彩であるが,その発生には共通したメカニズムの介在することが明らかとなってきた.すなわち,侵襲を受けて活性化したマクロファージはTNFやIL-1などの炎症性サイトカインを産生し,好中球や内皮細胞などの活性化と一連のメディエータ産生を介して炎症反応を誘導するが,その際の侵襲が過大であるかまたは遷延化した場合に大量のサイトカインが産生され,全身レベルでの炎症反応を招来した後,主に好中球一内皮細胞間の相互作用を介して臓器障害を惹起するというものである.また細胞分子レベルでは,TNF, IL-1などの炎症性サイトカインをはじめ種々の細胞接着分子,inducible nitric oxide synthaseなどの炎症性メディエータの遺伝子発現を調節する転写因子nuclear factorκBが発見され,臓器不全発生への関与が注目されている.
一方,特異的免疫機構はTh1/Th2系反応のバランスにより免疫状態を制御していることが解明され,侵襲時にはTh2系反応が優位になり細胞性免疫がdown-regulationされることが明らかにされつつある.このような免疫反応の不均衡が臓器不全の発生にどのように関わっているのかは今後の検討課題である.

キーワード
臓器不全, サイトカイン, 細胞性免疫, nuclear factor kappaB

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