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日外会誌. 99(3): 171-175, 1998


特集

外科栄養の進歩

6.静注用脂肪乳剤をめぐる諸問題

和歌山県立医科大学 第2外科

瀧藤 克也 , 谷村 弘

I.内容要旨
現在わが国で市販されている静注用脂肪乳剤は大豆油をレシチンで乳化したもので,1961年にWretlindが開発したイントラリピッドと,その類似品である.
脂肪乳剤は必須脂肪酸の供給源としての意義のほかに,熱源として1gあたり糖質の2倍以上のカロリーが得られ,多量に投与した場合でも高張ブドウ糖のように尿中に漏出しないなどの利点がある.しかも,末梢静脈からも安全に投与でき,完全に代謝燃焼されるとCO2の生成が糖質より少ない利点がある.
しかし,①製剤中に僅かに含まれる大豆蛋白によるアレルギー反応,②重症感染症患者や混合輸液とした時の脂肪塞栓,③投与量を中性脂肪として0.1g/kg/h以上にしたときの高脂血症と血中の脂肪乳剤粒子の長期残存による肺高血圧やhemophagocytosis,④脂肪粒子による網内系のブロックや50%以上含まれるω-6系脂肪酸であるリノール酸による免疫抑制,⑤中心静脈内投与時の真菌によるカテーテル感染など数々の問題点がある.
静注用脂肪乳剤の使用にあたっては,このような諸問題を十分に理解して,輸液栄養製剤の1つとして有効に活用すべきである.

キーワード
脂肪乳剤, アレルギー反応, 脂肪塞栓, 免疫, カテーテル感染症

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