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日外会誌. 99(3): 159-163, 1998
特集
外科栄養の進歩
4.経静脈栄養法
I.内容要旨経静脈栄養法をそれぞれの発展段階に応じて,その特徴,問題点や対策について述べた.栄養補給としての経静脈栄養法は,生体に必要なエネルギー源を確実に投与できる方法TPNとして,臨床に不可欠な管理手段として普及し,上部消化管や胆膵領域の悪性疾患の根治術後の早期成績向上に多大の貢献を示した.しかし,TPNは手技や管理および代謝に関連した合併症が出現するだけでなく,腸管粘膜細胞萎縮による生体防御能の低下が認められ,適応が問題となってきた.TPNの絶対適応は一定期間,経口摂取のみならず,経腸栄養法も不可能または不十分な状態である.ただ相対的適応として消化器外科大侵襲術後には現在でもTPNがよく使用されるが,安易な適応拡大は戒められている.TPNの投与カロリーは1日体重当り非侵襲時は30Cal,大侵襲下で35Calで十分である.非蛋白カロリー/窒素比は非侵襲時で180,侵襲下で120-150である.
次に,特定の疾患にあわせて組成を変化させた輸液を行い,生体に必要なエネルギー源を投与するだけでなく,病態の改善を目指す管理法として,病態別栄養輸液の概念が出現してきた.腎不全や肝不全用の種々の組成が考察された.重症急性膵炎も強い消耗性疾患であるばかりでなく,膵安静のため膵外分泌能抑制が必要であり,しかも麻痺性イレウスになりやすいので,TPNの方が使いやすく,病態生理に応じた組成が考えられる.
栄養アセスメントや代謝研究の進歩により,栄養状態の良好な患者の短期間の絶食には,消費エネルギー量に見合ったカロリー投与は必ずしも必要がないとして,末梢静脈を利用した栄養管理が見直されてきた.この末梢静脈栄養法と経腸栄養法との組み合わせは,大静脈を用いた経静脈栄養法と経腸栄養法の両者の欠点を減少させうる手段として,大侵襲時にも頻用されるようになってきた.
キーワード
高カロリー輸液, TPN, IVH, 病態別栄養輸液, 末梢静脈栄養法
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