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日外会誌. 99(2): 99-104, 1998
特集
心臓再手術の現況
9.大動脈弁,大動脈基部疾患の再手術
I.内容要旨1987年4月より1997年7月まで本院で行われた大動脈単弁置換術(AVR)は138例でありこのうちSt. Jude Medical弁を127例に,牛心膜弁を11例に使用した.同時期に行われた基部再建術は45例であり,このうち39例はCarrel patch手技によるBentall手術を行い,他6例は自己弁を温存した(Reimplantaion 4例, Remodeling 2例). Follow-up期間の平均と最長期間はAVR群,基部再建群でそれぞれ6.9±1.9年13年1カ月,4.9±3.9年12年6カ月であった.
術後10年の累積生存率はSJM群,生体弁群でそれぞれ73.8±7.0%,85.7±13.0%であり,術後12年での再手術からの回避率はそれぞれ97.7±2.3,62.5±21.3%であった.SJM群では一例のみ再手術を施行し,その原因はvalve thrombosisであり,生体弁群では2例の再手術を経験しともに人工弁感染が原因であった.基部再建術の術後10年での累積生存率は62.6±9.6%でり,このうち急性解離例と非解離例の累積生存率はそれぞれ44.4±15.7%と71.7±11.5%であった.基部再建術の再手術を3例に認め,再手術回避率は術後12年で79.1±20.9%であった.Bentall手術の再手術例のうち一例では右冠動脈吻合部仮性動脈瘤が形成され,組織の脆弱性とグラフト側孔の大きさが関与していたのではと考えられた.David手術を行った自己弁温存術式術後に自己弁変性によるARの増悪を認め,再手術を要した.
SJM弁によるAVRの遠隔成績は累積生存率,再手術回避率の面で良好であった.生体弁の累積生存率は優れていたが,SJM弁に比し高い再手術率を有した.Carrel patch手技によるBentall手術の遠隔成績は良好であったが,急性解離例の予後は不良であった.自己弁温存基部再建術式の早期手術成績は良好であったが,David手術術後の弁変性を認め,手術適応に十分な考慮が必要と考えられた.
キーワード
再大動脈弁置換術, 再大動脈基部再建術, 自己弁温存基部再建術
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