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日外会誌. 98(12): 1008-1012, 1997


特集

最近の新生児外科

6.食道閉鎖症と気管狭窄症の治療

兵庫県立こども病院 外科

津川 力 , 西島 栄治 , 連 利博

I.内容要旨
先天性食道閉鎖症と先天性気管狭窄症について,最近の治療上の進歩を述べた.食道閉鎖症Gross C型では,新生児期に気管食道痩を切り離し,食道吻合を同時に行なう,一期的食道吻合術が出生時体重や合併病変の有無にかかわらず,広く行なわれるようになってきた.上部と下部の食道が気管との交通をもたず,盲端に終わるGross A型では,胃,結腸および小腸を用いた食道再建法と,自己の食道をブジーや形成術で延長して吻合しようとする2つの流れがある.いずれの方法もそれぞれの利点を強調しているが,自己食道による再建の方が将来の問題が少ない.先天性食道閉鎖症の治療成績はほとんどの施設で80%以上の救命がみられている.これまではWaterstoneのcriteriaが治療成績を左右するとされてきたが,合併奇形に対する治療の進歩した現在,時代遅れのものとなった.治療成績を左右するものは複雑心奇形と気管狭窄である.小児心臓外科医のいる施設では前者はあらかた克服されたが,気管狭窄はなお食道閉鎖症治療成績向上のために挑戦すべき対象である.
先天性気管狭窄症の治療は極めて困難で,救命は患者の半数にみられるにすぎない.狭窄部が気管全長の50%以下である限局性狭窄では,狭窄部の気道を環状に切除し,気管を端々吻合されているが,成功例は狭窄部の長さが30%以下のものに多い.術中の呼吸管理の進歩やモノフィラメント合成吸収糸などの縫合材料の改良によるところが大きい.一方,狭窄部が気管全長の50%以上を占める広範囲気管狭窄症では,呼吸困難の解消にまで至る症例は多くない.治療法としては狭窄部気管の全長を縦切開し,切開口に肋軟骨,心膜などを縫い付け,内腔の拡大をはかる方法と,狭窄部の中央で気管を切断し,上下の気管壁にスリットを入れ重積させるslide tracheoplastyが行なわれている.いづれの方法も肉芽形成,再狭窄が高頻度に発生し,術後の長期の呼吸管理中に合併症で死亡するものが多く,今後に残された問題である.

キーワード
先天性食道閉鎖症, 先天性気管狭窄症, 治療

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