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日外会誌. 98(12): 996-1000, 1997
特集
最近の新生児外科
4.新生児心大血管外科の進歩
I.内容要旨先天性心疾患に対する新生児手術の成績は心エコー法などの診断技術の進歩,プロスタグランジンの導入や適切なカテコラミン製剤の選択,疾患の特性に応じた人工呼吸器管理による術前管理の向上,手術手技や体外循環の改良,綿密な術後管理などにより,ここ10年で目覚ましい進歩をとげてきた.特に,大血管転位症に対するJatene手術,総肺静脈還流異常症の修復術など体外循環を用いた修復術の治療成績は著しく向上している.著者らの施設における最近10年間の新生児開心術全体の早期死亡率は12.0%(235例中28例の死亡)と低値であった.そのうち大血管転位症に対するJatene手術の早期死亡率は7.6%,最近5年間では5.7%にまで手術成績の改善がみられている.遠隔成績も極めて良好であり,手術死亡を含めた術後10年の生存率は88%であった.総肺静脈還流異常症の早期成績も満足できるものであり,最近10年間の早期死亡率は11.3%(44例中5例死亡),最近5年間では4.1%に改善している.動脈管開存や心室中隔欠損などの心内奇形を伴う大動脈縮窄症や大動脈弓離断症は,大動脈弁下から大動脈の異常の有無によって一期的あるいは二期的手術を選択している.二期的手術における初回大動脈血行再建術の早期死亡率は低く,安定した手術成績が得られている(大動脈縮窄症4.3%,大動脈弓離断症11.1%).一方,大動脈弁下狭窄や大動脈低形成の合併に対する一期的根治手術は手術侵襲が大きく,死亡率は高くなっている.さらに,最も予後の不良な疾患の一つである左心低形成症候群の手術成績は,国内では今だ不良で,最近ようやく第一期手術(Norwood手術)の早期生存率の向上とFontan手術の成功例の報告が散見されるようになった段階である.
キーワード
完全大血管転位症, 総肺静脈還流異常症, 大動脈縮窄症, 大動脈弓離断症, 左心低形成症候群
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