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日外会誌. 98(9): 747-750, 1997
特集
進行度を配慮した食道癌外科治療
Ⅲ.術前リンパ節転移状況を配慮したT2,T3症例の合理的リンパ節郭清
2.頸部リンパ節陽性下部食道癌(Ei)のリンパ節郭清
I.内容要旨下部食道から頸部リンパ節に至るリンパ流には,本来の下方向流に対するcounter flowを経由して頸部に至る経路と腹部大動脈リンパ節からcisterna chyli・胸管を経由する経路がある.術前に頸部リンパ節陽性と診断される下部食道癌症例では頸部リンパ節への転移経路を正確に把握したリンパ節郭清が必要となる.対象は生検にて扁平上皮癌およびT2・T3と術前診断された下部食道癌入院症例113例である.術前ルーチン超音波検査にて頸部あるいは腹部大動脈リンパ節陽性と診断された症例は23例(20%)であった.その9例はcounter flow経由の頸部転移,5例はVirchow転移,9例は本来の下方向流に乗った腹部大動脈リンパ節転移であり,Virchow転移の5例中4例には臓器転移が併存した.右あるいは左開胸切除93例の頸部・上縦隔・腹部大動脈リンパ節転移率は,癌腫口側端の位置がIm領域の40例では13%・30%・3%, Ei限局の53例では2%・9%・11%であった.Counter flowを経由した頸部リンパ節への転移は癌腫口側端がIm領域に存在する場合により明瞭となった.切除例中,頸部リンパ節陽性は8例(8%)であり,1・2年生存率は38%・25%であった.根治切除は5例(No.104R 4例, No.101L 1例),いずれも占居部位EiIm,3領域郭清を行い,反回神経周囲リンパ節陽性であった.残りの3例は非根治切除で頸部と腹部大動脈リンパ節陽性であった.頸部リンパ節陽性下部食道癌症例の治療的郭清では,術前の超音波検査により腹部大動脈リンパ節転移がなく,手術時に根治切除可能と判断される症例を適応とすべきである.その予防的頸部郭清は,下部食道癌の口側端がIm領域に存在する上縦隔リンパ節陽性症例に行うべきと考えられる.この場合counter flowに乗った反回神経周囲リンパ節転移を伴っていることが多いことに留意しなくてはならない.
キーワード
下部食道癌, 頸部リンパ節転移, 体外超音波検査, 3領域リンパ節郭清, 食道リンパ流
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