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日外会誌. 98(8): 663-666, 1997
特集
慢性肝炎・肝硬変合併疾患の外科
Ⅱ.総論的事項
2.肝障害合併例における周術期管理と肝不全対策
I.内容要旨肝障害合併症例における肝切除は,近年飛躍的な進歩をとげ,専門施設での手術死亡率は1%以下に低下した.致命的な合併症である術後肝不全の回避には術前画像診断法の発達,系統的亜区域切除などの手術法の開発,門脈塞栓術などの術前処置,厳密な周術期管理が重要な役割を果たしてきた.1994年10月から1996年12月までに当科で肝切除を施行した159例中105例(66%)の慢性障害肝症例で,肝不全を合併した症例や術死例は1例もない.当科の肝障害合併症例の術前管理の要点はICG R15に基づく肝障害度判定, CT Volume metryによる肝容積の測定,必要に応じた門脈右枝塞栓術,汎血球減少例に対する脾摘である.術中の要点は,肝離断中の換気量の減少による肝静脈圧の抑制とそれに伴う出血量の軽減,全血輸血を極力控えた血漿による出血の置換である.術後の要点は,凍結血漿やK+保持性利尿薬を用いた血漿の膠質浸透圧や水分電解質出納の適正化である.ステロイドの投与によるサイトカイン誘導の抑制や抗生剤の予防的投与も重要である.以上の周術期管理には丁寧な肝離断操作や胆汁リークテストによる後出血や胆汁漏の予防が前提である.肝障害症例においても症例に応じた適正な手術や綿密な周術期管理を行うことで,安全な肝切除が可能である.
キーワード
肝硬変, 肝切除, 肝不全, 周術期管理
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