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日外会誌. 98(7): 646-648, 1997
その他
膵頭部癌の神経周囲浸潤と外科的治療
I.内容要旨膵癌に認められる神経浸潤の成立機序としては,癌巣からの神経周膜腔への直接的な癌細胞の浸入と,神経周膜を貫通する脈管を介しての浸入とが想定される.進展様式としては,神経周膜腔の癌細胞の腔内への連続的進展,神経束の分岐点での癌細胞の分岐浸潤,神経浸潤による癌浸潤の先進部形成があり,また,神経周膜の欠損部位を通じた神経周膜外への浸潤も考えられる.一方,最初の膵頭十二指腸切除術は1912年のKauschによる二期手術であり,1935年にはWhippleらは膨大部領域癌に対し膵と空腸を吻合した二期的膵頭十二指腸切除術を施行した.膵頭部癌に対する初めての膵頭十二指腸切除術は1937年にBrunschwigにより施行された.本邦では,久留により1943年に最初に一期的膵頭十二指腸切除部分切除が行われた.しかし,当時の膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術では切除率の向上は得られたものの術後生存率の改善を得るには至らなかった.その原因として膵癌では後腹膜をはじめとした周囲臓器や主要血管と膵外神経叢への癌進展が高度であることが明らかにされた.その後Fortnerは1972年からregional pancreatectomyを行い,5年生存率26%を得た.宮崎は膵癌症例の癌進展様式から根治手術の条件の分析を試み,その結果,1970年から膵頭部癌に対する郭清範囲の拡大を開始した.その後1977年にはtrans-lateral retroperitoneal approachによる門脈合併切除,広範囲後腹膜郭清,膵頭神経叢の完全切除を伴う拡大郭清膵切除術式を開発した.拡大郭清膵切除術により,1970年以降の膵頭部癌の切除率は47.9%と,それまでの10年間に比して明らかに向上した.また,手術成績では3年以上生存例を11例得,肉眼的治癒切除術後で25%の5年生存率を得た.
キーワード
拡大郭清膵切除術, 神経周囲浸潤, 膵頭十二指腸切除術, 膵頭部癌
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