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日外会誌. 98(7): 597-603, 1997


特集

膵癌治療の変遷

4.膵癌の遺伝子診断

国立がんセンター中央病院 臨床検査部

菅野 康吉

I.内容要旨
各種の固形腫瘍のなかで膵癌は最も高頻度に遺伝子異常を認めるがんである.K-rasがん遺伝子コドン12の点突然変異は膵癌の約90%に認められる.高頻度に染色体欠失を認める部位として17p(100%),9p(89%),18q(89%),1p(67%)等が知られ, p53(17p),p16(9p), DPC4(18q)等の癌抑制遺伝子の異常が報告されている.膵液あるいは十二指腸液から抽出したDNAより高感度な測定系を用いて遺伝子異常を解析する試みがおこなわれている.内視鏡的に採取した膵液の検討では,膵癌の約60%,膵管内乳頭状病変(IPN)の約90%でK-ras癌遺伝子の点突然変異が検出されるが,慢性膵炎あるいは膵嚢胞等でも異常が検出されることがある.K-rasの異常は癌のみでなく,腺腫あるいは膵管上皮の過形成性変化等でも生じ,発癌過程の早期から認められる遺伝子異常と考えられる.十二指腸チューブを用いて採取した十二指腸液からの解析は慢性膵炎等におけるK-rasの陽性率を低下させるのに有用であった.IPNでは膵液中に比較的多量の腫瘍細胞が含まれるので,K-ras以外の他の遺伝子異常の検出も可能と考えられる.p53等の遺伝子欠失を高感度に検出することにより,悪性度判定等に応用する試みについて解説した.

キーワード
Pancreatic carcinoma, Pancreatic juice, SSCP, K-ras, p53

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