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日外会誌. 98(5): 495-500, 1997


特集

胆管癌の治療における最近の治療法とその成績

6.上・中部胆管癌の外科治療

慶應義塾大学 医学部外科

高橋 伸 , 玉川 英史 , 富川 盛啓 , 斎藤 淳一 , 相浦 浩一 , 北島 政樹

I.内容要旨
1974年9月から1996年11月までに,教室で切除した胆嚢癌と乳頭部癌を除いた胆管癌104例のうち,主な占居部位がBsである13例,主たる占居部位がBmである14例,主たる占居部位はBiであるがBmにも病変が及んでいるBimの症例18例の計45例と, Bs症例との比較のため肝切除を伴った肝門部胆管癌症例39例,Bim症例との比較のたのBi症例20例を対象として,その治療成績について検討した.
Bs症例13例と肝門部胆管癌肝切除症例39例の比較では,有意差をもって肝門部胆管癌肝切除例の成績が良好であった.Bs症例では,限局型を除き,肝切除を行わないとhw0にすることは困難であることが再確認された.
Bm, Bim, Bi症例の比較では,生存率は3群の間に各々有意差はなかったが,Bim, Bm, Biの順に予後良好であった.Bim症例の成績が良好であった理由としては,3群の中では治癒切除例が多かったこと(16/18,89%),Stage IV症例が少なかったこと(4/18,22%),n0症例が多かったこと(11/18,61%)による.
肝門部胆管癌肝切除39例中9例,Bs 13例中2例,Bm 14例中5例, Bim 18例中1例, Bi 20例中2例に血管合併切除を施行した.肝門部胆管癌肝切除例とBm症例において血管合併切除の効果について検討すると,肝門部胆管癌肝切除例では血管合併切除群と非血管合併切除群に有意差はなく,血管切除例でも長期生存の可能性があることが判明した.Bm症例では血管合併切除群の予後は不良で,非血管合併切除群と比較して有意に成績が不良であった.
現在,切除断端を癌陰性にするために種々の努力がなされている.Bsにおけるhwは肝切除の施行により改善される可能性があり,Bim, BiのewはPD時の後腹膜郭清により陰性化を図ることが可能となる.しかし,Bs, Bmにおけるewの陰性化については現在行われている術式では限界があり,特に病変が肝十二指腸間膜内に浸潤している場合にはHLPDの適応となる.筆者らもHLPD症例を経験したが治癒切除とならず長期生存を得ることはできなかった.個々の病態に最も適した術式を施行し,いかにして治癒切除の割合を高めていくかが今後の課題である.

キーワード
上部胆管癌, 中部胆管癌, 外科治療, 膵頭十二指腸切除術, 肝膵同時切除術

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