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日外会誌. 98(5): 472-478, 1997


特集

胆管癌の治療における最近の治療法とその成績

2.胆管癌の進展様式と生物学的悪性度

横浜市立大学 医学部第2外科

瀧本 篤 , 遠藤 格 , 市川 靖史 , 石川 孝 , 渡会 伸治 , 嶋田 紘

I.内容要旨
胆管癌(肝門部~中部)症例の進展様式と生物学的悪性度との関係を調べた教室のdataを中心に,胆管の解剖学的特徴と術後成績も考慮した適切な切除術式を考察した.
胆管の解剖学的特徴として,門脈及び肝動脈とは,上部~下部胆管のいずれでも5mm以内で隣接し,壁構造も,明らかな筋組織はなく,特に上部ではloose networkを形成しているにすぎず,特に上部胆管癌では,深部へ容易に浸潤可能な環境にある.
胆管癌の進展様式については乳頭型(P型)に多い粘膜(m)を置換していく様式と結節型(N型)及び,び漫浸潤型(D型)に多い漿膜下層(ss)を浸潤していく様式の2種類がある.さらに細胞間接着因子発現率が,組織型分化度と関連していたことより前者は高分化,高接着性の腫瘍細胞を主体とし,後者は低分化,低接着性の腫瘍細胞を主体とする進展様式であることが示された.胆管癌の生物学的悪性度は,核DNA量や細胞増殖能から検討した報告があるが,教室で検討した形態学的悪性度の指標である癌細胞核面積は,Ki-67発現率やp53異常蓄積率と正の相関を示し,どの肉眼型でもssの方がmより大きく, P型では狭窄部のmが先進部のmに比べ大きかった.以上よりssに存在する癌細胞は悪性度が高く,粘膜内を進展する癌細胞は悪性度が低いことが示された.最近は肝合併切除でhw(-)とすることや,尾状葉合併切除により,胆管癌術後5年生存率が10~40%と向上しているとする報告が多い.教室の検討でも肉眼型によらずsurgical marginをfreeにすることが重要であったが, P型ではhw(+)でも相応の生存期間(術後32カ月)が認められた.以上よりP型ではhwを考慮した胆管切除でよく,たとえmでのhwが陽性であっても,相応の予後は期待できる.一方,N型やD型ではssに存在する悪性度の高い癌細胞が,広く深く浸潤していくためsurgical marginをfreeにする肝切除やPDあるいは血管合併切除も必要である.

キーワード
胆管癌, 進展様式, 生物学的悪性度, 至適切除範囲

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