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日外会誌. 98(4): 412-417, 1997


特集

炎症性腸疾患の治療における最近の進歩

3.クローン病に対する在宅経腸栄養とチームアプローチ

1) 社会保険中央病院 内科
2) 社会保険中央病院 大腸肛門病センター

高添 正和1) , 岩垂 純一2)

I.内容要旨
クローン病治療の目的は病勢のコントロールと合併症の回避にある.具体的には,1)活動性病変の速やかな緩解導入と緩解維持,2)Quality of Life(生活の質)の改善,3)栄養状態の改善,4)腸管外合併症の改善である.クローン病治療には,1)栄養療法,2)薬物療法,3)手術療法,4)精神的サポートが在る.本邦では栄養療法とりわけ成分栄養経腸栄養はクローン病の標準治療として推奨されている.本疾患が本来必要エネルギー量の多い若者に好発することもあり,経腸栄養を行う場合には,程度の差こそあれ経口摂取制限を伴うため,患者各個人別に対応した食餌療法を含めた栄養指導が不可欠となる.クローン病の病因が不明で根治療法が存在しないため,その医療管理の主体はCureではなくCure & Careにあり,医師のみならず看護婦,栄養司,ソーシャルワーカ,ETナースなどコメディカルスタッフとのチームアプローチが必須となる.そのアプローチには次のものがある.1)内科外科:クローン病は慢性疾患であるが経過中に高率に手術が必要となる.さらに手術しても再発率が高いため,術後の残存腸管機能や患者のQOLを考慮した術式の選択をも考慮して内科外科のチームアプローチが必須である.2)栄養司,看護婦:クローン病の標準治療としての経腸栄養を円滑に行うためにはチューブの自己挿入の訓練や消毒,固定,栄養剤の調整保管,チューブとポンプの接続,ポンプの取り扱い,栄養剤の注入速度や栄養剤の濃度,経腸栄養中にトラブルが生じたときの対処方法などについて指導が行われる.また患者の過去の食物摂取歴や食事嗜好の変化,症状を悪化させる食品の検索,食物アレルギーの有無などについて食事指導を行う.経腸栄養療法に際して,患者各個人の病態に合わせて,栄養剤の種類や量の決定,栄養法の選択,時に中心静脈栄養から経腸栄養,そして食事併用への移行栄養に際しては栄養司との協議が必要である.また緩解期では,日常の経腸栄養や食事内容のチェックが重要である.患者が若者が多いことや長期に亘る療養努力を鑑みれば,各患者の病態や社会的背景をも考慮した全人的アプローチがなされなけれぼならない.そのためには“唯,己を捨てよ,人(患者)の為だけを考えよ”の気概が必要である.

キーワード
クローン病, 在宅経腸栄養, チームアプローチ, コメディカルスタッフ

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