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日外会誌. 98(3): 396-402, 1997


特集

大腸癌-診断と治療の進歩

9.術後補助化学療法の意義と問題点

愛知県がんセンター 消化器外科部

加藤 知行 , 平井 孝

I.内容要旨
大腸癌治癒切除後の予後を向上させる目的で行われる補助化学療法について内外の報告を通覧し,その意義と問題点について述べた.
全身投与法は,欧米ではMeCCNU/VCR/5-FUの併用療法が有効な成績を上げたが,近年は結腸癌のDukes C症例については5-FU/levamisoleの併用療法がstandard therapyとされる.しかし本邦で行われた追試では有効性を証明することはできなかった.従来本邦で行われた幾つかの補助化学療法では有効とする成績を報告した研究でも,結腸・直腸,進行度などについて有効な投与の対象を特定できなかったが,近年報告された大腸癌手術の補助化学療法研究会とがん集学的治療研究財団・特定研究7の2つの研究は共にmitomycin Cと経ロフッ化ピリミジン系抗癌剤の投与が直腸癌の特にDukes C症例で局所再発を抑え,生存期間を延長するという報告であり,有効性について一定の傾向を示した.
再発危険部位を想定した局所投与法は,肝転移に対する抗癌剤の門脈内注入が有望と思われるが未だ明確な結論は出ていない.直腸癌術後の局所再発に対する上直腸動脈への動注や術野への抗癌剤散布はその効果は明らかでない.直腸癌に対しては放射線と抗癌剤との併用療法に期待がかかる.
大腸癌の補助化学療法は,欧米で有効だった治療法がそのまま本邦の手術症例に当てはまるとは限らず,本邦の手術に適した治療法を開発することが必要である.

キーワード
大腸癌, 大腸癌の補助化学療法

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