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日外会誌. 98(3): 391-395, 1997
特集
大腸癌-診断と治療の進歩
8.肛門括約筋機能温存術
I.内容要旨下部直腸癌の外科治療では必要十分な根治性と機能温存を考慮した術式を選択すべきである.腫瘍下縁が腹膜融転部以下のsm以深の直腸癌で括約筋温存術(SSP)を施行された症例の腫瘍学的予後と排便機能を検討した.SSPは限局性の高分化ないしは中分化腺癌でAWが2cm以上確保できるか,または,それ以外の腺癌でAWが3cm以上確保できる場合に適応された.腫瘍学的予後は再発率,再発部位,生存率を同部位にある直腸癌で直腸切断術(APR)が施行された症例と比較した.排便機能は自己記入式アンケート調査(排便同数,下剤の使用,便意,排便時の腹圧,残便感,失禁)を行い,腫瘍下縁が腹膜酬転部より口側の直腸癌でSSPが施行された症例(対照)と比較した.1984年から1993年までに根治度AのSSPは114例, APRは95例であった.APR例はSSP例よりa2以深, n2以上の症例が多かった(p=0.011, p=0.059).中央値68.6カ月の追跡で,SSPでは17.5%に, APRでは30.5%に再発を認めた(p=0.027).局所再発には差がなく(SSP 4.4%, APR 6.3%),血行性再発がAPRに有意に多かった(SSP 13.2%, APR 26.3%:p=0.016).SSPはAPRより有意に予後が良好であり(p=0.0007),5年生存率はそれぞれ80.2%,70.0%であった.SSPの術後排便機能は対照との差がなかったが,62%で時々失禁を認めた.本研究でのSSPの適応基準での術後成績は腫瘍学的予後では満足ゆくものであった.排便機能は対照と差はなかったが,排便回数の増加と失禁率から見ると排便機能改善を目的とした術式の導入が必要である.
キーワード
直腸癌, 直腸癌手術, 括約筋温存術, 機能温存術
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