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日外会誌. 98(1): 8-15, 1997
特集
肺癌治療の現状
3.肺癌のリンパ節転移と郭清
I.内容要旨肺癌治療における手術の果たす役割は大きい.治癒を目指す場合,原発巣及び郭清の断端に癌の遺残のない切除が要求される.この要求を満たす郭清を行うためには,肺局所リンパ系の解剖及び生体での肺局所リンパ流路を知り,転移の実態を調べて郭清の範囲及び方法を決めることが必要である.肺局所リンパ系の研究に基づき著者らは,右肺癌に対しては後側方経路からの同側縦隔拡大郭清を,左肺癌に対しては胸骨正中経路からの両側縦隔郭清を基本術式とし,上部上縦隔リンパ節転移例に対しては左右の別なく頚部・縦隔連続郭清を頚部襟状切開に胸骨正中切開を連続させた経路から行っている.これらの拡大郭清症例におけるリンパ節転移マップを作成し,転移の実態を調べた結果,右肺癌症例では,R2aの範囲のリンパ節に多く転移を認めたが,N2-3症例の26%に前縦隔または気管後リンパ節転移を,18%に対側気管気管支リンパ節転移を認めた.また左肺癌症例では,上葉原発例で20%,下葉原発例で57%の症例に対側縦隔転移を認めた.これらの症例のうち,T1-2M0の症例ではリンパ節転移がN2, N3α及び転移レベル数の如何に拘わらず65%以上の術後5年生存率を得ている.さらに,cN0-3αでpN3γ症例中完全切除が可能であった症例では60%の5年生存率が得られている.これらの結果からcN3α以下で完全切除可能と判断出来る症例に対しては,積極的に拡大郭清を行うことにより術後成績の向上が得られる可能性が示唆されている.
キーワード
肺局所リンパ流路, 肺癌の縦隔リンパ節転移, 縦隔郭清術式の選択, 系統的拡大縦隔郭清術, 頚部・縦隔連続郭清
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