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日外会誌. 97(12): 1091-1096, 1996
特集
外科周術期重症感染症の現状と対策
11.臨床分離菌からみた難治性感染症
Clinically lsolated Bacterii Seen in Complicated lnfections
I.内容要旨外科領域において術後感染を主体とした感染症の起因菌種は時代とともに大きく変貌してきている.これは細菌検出技術の進歩あるいは術後感染予防に用いた抗菌剤の影響が大きいが,近年でのMRSA感染症のごとく院内感染によるものも重視しなければならない.臨床分離頻度の高い菌種は
Staphylococcus spp.,
E. faecalis,
E. coli,
Klebsiella spp.,
E. cloacae,
P. aeruginosaそれに
Bacteroides spp.であるが,病原性,検出頻度および薬剤耐性性の面から考慮すると,最も重視すべき菌種はMRSA,
P. aeruginosaおよび
Bacteroides spp.である.MRSAは院内感染で現在もまだ臨床に非常に多く関わりを有しており,耐性化の認められない薬剤はVCMのみである.
P. aeruginosaは術後感染に最も多く関与しており,セフェム系薬には強い抗菌力を有する薬剤は少ない.
Bacteroides spp.の約半数はβ-lactamase産生株であり,ペニシリン系,セフェム系抗菌薬の多くを病巣内で不活化する.
E. coliなどとの混合感染時に同菌に強い抗菌薬を用いても,β-lactamaseに弱い薬剤であれば,病巣内で不活化され
E. coliにも抗菌力を発揮しえない可能性がある.臨床的には上記細菌の3種,4種類の複数菌感染が認められるため,十分な注意が必要である.
キーワード
P.aeruginosa, MRSA, Bacteroides spp., β-lactamase, 複数菌感染
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