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日外会誌. 97(12): 1054-1059, 1996
特集
外科周術期重症感染症の現状と対策
5.重症感染症におけるサイトカインを介した生体反応
I.内容要旨感染に対する反応は,他の侵襲に対する反応と共通した急性期反応と,病原体に特異的な免疫応答反応とから構成される.急性期反応は炎症反応がその中核をなし,感染防御に不可欠な反応であるが,免疫応答反応に様々な影響を与えるとともに,過度の炎症反応は,感染症の重症化因子となっている.このような生体反応に種々のサイトカインが複雑に関与している.抗原刺激に対しマクロファージはTNF-αとIL-1βを産生し,これがマクロファージ,単球,好中球,血管内皮細胞などの標的細胞に働き,種々の生体反応が惹起される.TNF-αとIL-1βは,自己の産生を促進し,IL-2,IL-3,IL-4,IL-6,IL-8,MIP-1α,IL-10などのサイトカイン,その他の内因性メジエータ産生を誘導して,感染に伴う急性炎症反応を惹起するとともに,T細胞,B細胞を直接,間接に活性化する.活性化されたCD4+Th細胞はTh1細胞あるいはTh2細胞に分化し,特有のサイトカインを産生して,それぞれ,細胞性免疫,液性免疫に関与する.Th1細胞とTh2細胞のバランスにもサイトカインと侵襲ホルモンが関与している.一方,外科侵襲下の重症感染症では,サイトカインの制御機構が破綻し,血液中に炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインが高濃度出現するサイトカイン・ストームの状態となり,重症SIRS(systemic inflam matory response syndrome)となる.感染症の病態におけるサイトカインの役割の解明が進み,抗サイトカイン療法などの,生体反応の制御による新しい治療法が開発されつつある.
キーワード
侵襲, sepsis, 免疫応答, サイトカイン, サイトカイン・ストーム
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