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日外会誌. 97(12): 1048-1053, 1996
特集
外科周術期重症感染症の現状と対策
4.重症腹腔内膿瘍の病態と対策
I.内容要旨腹腔内膿瘍とは,腹腔内の限局性化膿性疾患で限局性腹膜炎ともいわれる.宿主の防御能により腹腔の汚染を限局化させることのできた病態ではあるが,侵入してきた細菌とその産生する毒素の総てに打ち勝った病態ではない.宿主の栄養状態や免疫能の状態によっては致命的となる可能性があり,適切な対策が要求される.腹腔内膿瘍に関連する細菌は腸内細菌由来であり,
Escherichia coliの分離頻度が最も高く,次いで
Bacteroides fragilis group,
Enterococcus spp.などである.これは消化管の穿孔部より漏れ出した腸内細菌の頻度として捉らえることができる.一方,術後の腹腔内膿瘍では,
Enterococcus spp.の分離頻度が最も高く,次いで
Pseudomonas spp.,MRSAを中心とする
Staphylococcus spp.などである.これは続発性腹膜炎を抗菌薬で治療した後に残存する細菌であるとみることができる.いずれも混合感染が多いが,術後腹腔内膿瘍では
Enterococcus faecalis分離例で87.5%,
Pseudomonas aeruginosa分離例で80.0%,
B. fragilis分離例で88.0%が混合感染である.しかも
Staphylococcus aureus分離例を除き多くの細菌の50%以上は3菌種以上の混合感染である.治療の原則は,循環動態などの全身管理と共に膿瘍に対する外科的ドレナージである.混合感染を考慮した抗菌薬投与も重要であるが,一旦形成された膿瘍を抗菌薬のみで治療しようとすることは誤りである.また,併存病変に対する処置と共に栄養状態の改善も計らなければならない.
キーワード
腹腔内膿瘍, 混合感染, 嫌気性菌, P.aeruginosa, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)
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