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日外会誌. 97(11): 1010-1017, 1996
特集
臓器移植
11.異種移植
I.内容要旨1980年代にはじまる有効な免疫抑制剤の開発を契機に,同種臓器移植は現在までに飛躍的に発展を遂げてきている.しかし,ドナー提供数の慢性的不足のため,今もなお多くの末期臓器不全患者を救命し得ないでいる.
1960年代前後にすでに臨床応用されたヒト以外の動物からの異種臓器移植は,この意味からも,近年再び注目されるようになった.また最近の分子生物学や遺伝子技術の向上がこの分野の研究に一層拍車をかけたと言える.異種間移植にみられる拒絶反応としては遺伝学上種属のかけ離れが大きい動物間では,異種抗原と自然抗体の免疫反応を基本とする漿液性反応と,それにより引き起こされる補体活性反応により,臓器は極めて短時間しか機能しない.一方ヒヒ→ヒトなどの種属間の近い間での移植は,同種移植でみられるような細胞性反応を主体とする.そこで将来的に実用性の面からブターヒト間の異種移植の基礎研究が積極的に行われるようになり,いかに超急性拒絶反応を有効にコントロールするかの様々な手段が試みられるようになった.最近ではヒト補体制御遺伝子を動物に誘導し,そのトランスジェニック動物の心臓移植による実験がおこなわれ,極めて良好な結果も得られている.しかし,未だ多くの問題が残されており,今後の大きな課題となっている.
本章では超急性拒絶反応についてそのメカニズム,そしてそれに対する種々の対策を中心に,近年の知見を総括的にまとめて述べる.
キーワード
異種移植, 超急性拒絶反応, 補体反応, 補体制御因子, トランスジェニック動物
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