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日外会誌. 97(9): 759-764, 1996
特集
外科的侵襲と生体反応
III.外科的侵襲と臓器不全
5.臓器微小循環障害の成因と意義
I.内容要旨外科的侵襲による臓器障害における微小循環障害の意義について,熱傷ラットの胃粘膜微小循環障害モデルで検討した.胃粘膜病変形成における微小循環の観察から,胃粘膜血流の低下が熱傷後5時間で認められ,同時に白血球一内皮の相互作用が生じることが示された.さらに,この白血球一内皮相互作用と活性酸素生成の亢進により生じた微小循環障害が,胃粘膜病変形成の原因となることが明らかになった.これらより,微小循環障害が外科的侵襲による臓器不全の一因であることが示唆された.一方,微小循環障害の原因として重要なものは,臓器局所あるいは全身での炎症性サイトカイン過剰発現である.エンドトキシンによる肝微小循環障害モデルと肝虚血一再灌流モデルで,以下の点が明らかになった.IL1とTNFはICAMなどの細胞間接着分子の発現を誘導し,好中球の血管内皮への膠着を惹起する.また,IL-1とTNFはIL-8の産生を誘導し,直接的あるいは間接的に好中球を活性化する.さらに,好中球をprimingすることで好中球からの活性酸素の生成を増強する.また,互いに他のサイトカインの産生を誘導し,さらに互いに相乗的に作用する.以上のように,外科的侵襲に起因する臓器障害では,臓器障害機序として臓器微小循環障害が重要な位置を占め,その程度に差はあるが微小循環障害の原内は臓器局所の炎症反応であると考える.外科的侵襲による臓器不全の病態を,炎症性サイトカインと微小循環障害の観点から概説した.
キーワード
AGML, SIRS, サイトカイン, 微小循環障害, 好中球ー内皮相互作用
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