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日外会誌. 97(8): 611-617, 1996


特集

胆道拡張症と胆道閉鎖症-最近の治療の動向-

肝内結石症の成因に関する考察

1) 山梨医科大学 第1外科
2) 順天堂大学 医学部病理学教室

松本 由朗1) , 藤井 秀樹1) , 板倉 淳1) , 三浦 和夫1) , 須田 耕一2)

I.内容要旨
現在,臨床上経験する肝内結石症は原発性肝内結石症が主体であり,肝内結石症においても,その成因が住環境や食生活の内容の時代的変遷と大きく関係を持っている.また結石の種類も胆道感染によって生ずるビリルビンカルシューム石に比べて,コレステロール胆石や黒色石も認められるようになり,次第にその割合が増しつつある.このような現在の肝内結石症に認められる胆管の形態には一定の共通性が認められる.すなわち,結石の有無に拘わらず肝内胆管の拡張と肝外胆管の拡張を伴い,さらに解剖学的に肝門部の一定の部位の胆管に狭窄が認められることである.この形態は先天性胆道拡張症(拡張症)のうち,肝内胆管の拡張と,肝門部胆管の狭窄を伴う小児例の形態と共通した特徴である.自験例の原発性肝内結石症42例中41例に拡張症の形態と肝門部の一定の部位の胆管に狭窄が認められた.さらに肝内結石を持たない肝内胆管の拡張を伴う拡張症に,肝門部胆管狭窄を併存する30例を経験している.このことから現在の原発性肝内結石症には,先天的な胆道形成異常がその母地として重要な位置を占めることを明らかにした.拡張症ならびにこの肝門部胆管狭窄は,胎生6週から10週までの肝外胆管と肝内胆管の内腔形成期に生じたものと推測され,特に肝門部胆管狭窄は,肝外胆管の内腔形成と肝内胆管の形成時における両者の内腔の疎通機序の不一致によって生じたものと考えられた.したがって画像診断の発達,普及によって結石を持たない拡張症と胆管狭窄の併存例が発見される機会が増えるものと思われるが,この胆管形態が肝内結石症さらに肝内胆管癌発生の母地である,との認識をもって対処されなければならない.

キーワード
肝門部胆管狭窄, 先天性総胆管拡張症, 肝内胆管癌, 原発性肝内結石症

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