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日外会誌. 97(7): 510-514, 1996


特集

閉塞性動脈硬化症

血行動態検査

東京大学 医学部第1外科

重松 宏 , 細井 温 , 小見山 高士 , 安原 洋 , 武藤 徹一郎

I.内容要旨
虚血の重症度を評価し治療方針を選択する上で,画像診断による閉塞性病変の解剖学的評価と併せて血行動態検査は不可欠のものである.非観血的方法の中ではドプラ血流計が測定者間誤差が少なく再現性に優れているが,安静時の足関節圧や圧比(API)から肢の予後の推測や運動時の血行動態の評価を行うという限界がある.重症虚血肢の基準としてAPIは0.3前後がcriticalと考えられる.間欠性跛行の評価では,運動負荷前後のAPIには相関はみられるが,最大跛行距離との間には有意な相関はみられず,負荷によるAPIの低下から跛行の重症度を評価することは不十分と考えられる.
跛行の病態と考えられる運動時の筋肉虚血の評価法として,近赤外線分光法による組織酸素動態の観察が注目される.酸素化および脱酸素化ヘモグロビンの吸光度の違いを利用して,組織内酸素濃度変化を連続的かつ無侵襲的に測定するもので,両者の解離のパターンから跛行は3型に分類される.本法では最大跛行距離のみではなく,虚血からの回復過程の観察から跛行の重症度評価が可能で,運動負荷量を考慮にいれ,回復時間を総運動時間で除した回復・総運動時間比RAIが評価に有用である.RAIは最大歩行距離や安静時にAPIと負の相関を示すが,低値のものではばらつきが大きく,運動時の筋肉組織の低酸素状態に対する耐容能や回復期の酸素運搬能や獲得能など,筋肉自体の回復能力を総合して反映した新しい指標になると考えられた.薬剤を含めて治療効果の判定や跛行の鑑別診断にも有用で,静脈疾患を含めた末梢血管病変の病態解析に応用範囲が広がりつつある.
虚血肢の血行動態は,心肺機能や運動負荷により大きく左右され,観察結果の評価には慎重を要するが,肢を構成する個々の臓器について無侵襲的で経時的な評価法を今後さらに検討する必要がある.

キーワード
閉塞性動脈硬化症, 間欠性跛行, 近赤外線分光法, 重症虚血肢, ドプラ血流測定

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