[書誌情報] [全文PDF] (2530KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 97(7): 481-485, 1996


特集

閉塞性動脈硬化症

血液凝固異常

東京医科大学 第2外科

石丸 新

I.内容要旨
閉塞性動脈硬化症(ASO)における血液凝固線溶系について,疾患自体にみられる異常とその治療への影響,また治療にともなう凝固線溶異常とその注意点について解説した.
血小板活性の指標であるβ-TGおよびPF4の変動から,血小板放出反応はASOの重症例においてより充進し,末梢循環障害の程度に影響されることが示唆される.凝固系については,血栓形成の指標であるFpAの増加がみられ,その変動には外因系凝固因子および凝固阻止因子AT-IIIが関連し,動脈硬化に起因する血管内皮障害や脂質代謝異常の関与が考えられる.線溶系については,FDPおよびPICの増加から線溶充進の傾向にあり,t-PAの変動から凝固充進に対応した線溶系の活性化が推定される.これら凝固線溶系異常を認めるASOに対し,抗血小板療法および抗凝固療法を適応することは合目的であり,病態に応じ適切な抗血栓療法を行うことは,その治療のみならず病変進展の予防にも有用と考えられ,今後は遠隔成績への影響について検討する必要がある.
一方,血管外科手術の対象となるASOでは,術前より既に抗血栓療法が行われている場合が多く,術前よりその凝固線溶系への影響について把握することは術後合併症の防止に重要である.また,術中補助手段としての体外循環や,輸血節減を目的とした回収式自己血輸血にともなう凝固異常についても,その適応と限界について理解し対処すべきである.

キーワード
閉塞性動脈硬化症, 凝固線溶系, 血小板機能, 分子マーカー

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。