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日外会誌. 97(6): 442-448, 1996


特集

食道癌外科治療の実際

食道癌手術の術後管理と処置
(2)再開胸の適応基準

千葉大学 医学部第2外科

小出 義雄 , 磯野 可一 , 松原 久裕 , 有馬 美和子

I.内容要旨
胸部食道癌術後に再開胸が必要となる合併症には,血胸(後出血)・気胸(気管瘻,気管支瘻,肺瘻)・膿胸・乳糜胸などがある.
血胸の出血源は,胸壁(肋間動脈枝)である場合が多く,次いで気管支動脈枝・固有食道動脈などがある.再開胸の適応は,100ml/hr以上の出血が5時間以上持続する場合,輸血を行わなくては血圧が維持できない場合であり,胸腔ドレーン排液のハマトクリット値が15~20%である場合は要注意である.
気胸は再開胸となることは少ないが,巨大肺嚢胞の破裂やbarotraumaに起因する大量のair leakageで,肺虚脱が1週間におよぶ場合には瘻閉鎖術が必要となる.
閉鎖性膿胸は適当なドレナージと洗浄により対処でき,一般には再開胸は行われないが,気管または気管支瘻を伴う陳旧性膿胸では,大網充填・筋弁充填などが行われる.
乳糜胸の頻度は高くないが,再開胸の適応となる症例は少なくない.絶食・IVHによっても,1,500ml/dayを超える排液が5日以上持続する場合,保存的治療に抗して2週間以上減少傾向がみられない場合には再開胸の適応となる.

キーワード
食道癌, 術後合併症, 再開胸, 気胸, 血胸, 乳糜胸, 胸膜癒着療法, pleurodesis

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