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日外会誌. 97(6): 398-403, 1996
特集
食道癌外科治療の実際
食道癌手術の術前管理と処置
(2) 心・肺・腎疾患
I.内容要旨食道癌患者に対する外科的治療の術前管理として,心・肺・腎疾患合併患者の管理について解説する.食道癌は進行症例が多く,高齢であることに加え,経口摂取不良などにより術前からある程度の心・肺・腎機能の低下が見られる.
食道癌外科手術自体,心・肺を始め循環系に多大な侵襲が加わる.多くの場合周術期管理は心・肺など循環系の補助と水分管理という集中治療を必要とする.従って,術前からこれら循環系や腎機能に何らかの合併症がある場合,食道癌に対する外科的処置に制限が加わることにもなりかねない.本稿では,心疾患・呼吸器疾患・腎疾患それぞれに対する術前評価方法を系統的に上げ,更におのおのの合併症に対する術前処置が可能なものについてはその対処法を上げた.また,実際の症例として,慢性腎不全を伴った胸部食道癌に対して根治手術を行った経過を提示した.
心・肺系の術後合併症は時として致命的となる.術前から存在する心・肺系の合併症に対しては循環器内科・呼吸器内科・麻酔科などと十分な検討を加えなければならない.また,慢性腎不全を伴うような症例に対しては術中・術後の急性腎不全に対するブラッドアクセスラインの確保など慎重な準備が必要である.
食道癌根治手術だけに限らず,外科的手術を行うときの術前合併症,中でも心・肺・腎疾患の合併は原疾患の治療を行う上で重要な問題となる.それら術前合併症が外科手術に伴う危険性(surgical morbidity)を高めたりあるいは致死的な合併症(surgical mortality)をもたらすからである.従ってこれらの術前評価は原疾患の治療法に制限をもたらしたり,目標とする手術適応の決定もこれら合併症から発生すると考えられるリスクを考慮したものでなければならない.
キーワード
術前合併症, 心疾患, 肺疾患, 腎疾患, 術前処置
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