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日外会誌. 97(6): 392-397, 1996
特集
食道癌外科治療の実際
食道癌手術の術前管理と処置
(1) 高齢者
I.内容要旨食道癌の好発年齢は60歳代ではあるが,高齢化社会の到来によりその平均年齢が上がり,70歳代,80歳代の食道癌切除例も増加しつつある.
食道癌における高齢者を何歳以上にすべきかは未だ定説はない.
そこで,1987年から1993年迄の7年間に於ける食道癌切除242例中,C1以上の184例を対象にA群:50歳未満,B群:50歳代,C群:60歳代,D群:70歳代,E群:80歳以上の5群の年齢構成別にover allの累積生存率をKaplan-Meier法で求めてみた.5年生存率は,A群40%,B群37.9%,C群39.2%,に対し,D群は20.5%,と急に成績が悪くなっている.E群は5年経過例はないが,1年生存率60%,2年生存率30%でありD群のそれより良い成績である.
70歳代に問題ありと考え,手術術式を当科の標準術式である右開胸食道切除・胃再建二領域郭清の145例に限って術前状態,進行度,術後状態を年齢構成別に比較した.
呼吸機能正常はC群62%に比しD群48%,心電図異常はC群21%に比しD群43%と70歳代で有意に悪化(p<0.01)している.進行度は群問に差はない.
術後合併症は70歳代はそれ以下に比し,肺炎,心電図異常が多く(p<0.01),せん妄頻〔度も高い(p<0.05).縫合不全は13~16%と年代間に差を認めない.
死因は癌死がA群54%に比しD群は29%と低く,他病死,在院死が増化した.
80歳代は70歳代よりむしろ術後合併症が少なかったが,対象例が肉体的な超エリートのためと考えられる.
従って,食道癌における高齢者は70歳以上と考え,上縦隔郭清も控えたほうが安全と思われる.
キーワード
食道悪性腫瘍, 食道癌, 高齢者
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