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日外会誌. 97(5): 368-374, 1996
特集
乳癌領域の最近のトピックス
血管新生からみた乳癌の悪性度
-血管新生は何を反映するのか-
I.内容要旨血管新生(tumor angiogenesis)は固形腫瘍の成長に不可欠な機構であり,癌化,増殖,転移などの過程に深く関わる腫瘍宿主問の相互作用的メカニズムである.機構解析や治療への応用など多方面から研究が行われているが,本稿では予後因子としての意義が注目される微小血管密度に関し,最近の報告をもとにreviewを行った.
微小血管密度(microvessel density:MVD)は血管内皮細胞関連抗原factor-VIIIやCD-31に対する抗体を用いた免疫組織学的検索により半定量的に評価されている.factor-VIIIを用いた視野1mm
2あたりの換算MVDは67.3~84.0,CD31では120.3~135の報告が多くほぼ一定であった.腋窩リンパ節転移陽性群,陰性群それぞれについてrelapse free survival(RFS),over all survival(OS)との相関が検討されているが,我々の検索しえた範囲では2報告例をのぞいた8報告例以上でMVDが有意な予後因子と評価されている.予後との関連がなかった2報告は,他報告例に較べ平均血管密度に大きな差があり(factor-VIIIで167.4と174.5)標本固定条件等も含めて慎重な比較が必要である.他因子との相関では若年者で高く,腫瘍径3cmまでは正の相関を示す傾向がある.ER,p53,c-erb B2などとは相関がみられないが,我々の検討ではvascular endothelial growth factor(VEGF),plateletderived endothelial cell growth factor(PD-ECGF)との強い相関を認めている.また血清中に検出されるVEGFは予後との関係,特に血行性転移との関係で注目されている.MVDの予後因子としての評価は世界中で進行中であり,将来的には術後補助療法の有力な層別因子となることが期待されている.
キーワード
血管新生, 微少血管密度, 予後因子, Factor VIII, CD-31
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