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日外会誌. 97(4): 252-256, 1996
特集
胃癌外科治療の最近の進歩
胃癌における遺伝子変化
I.内容要旨胃癌の多段階発生の過程を決定する多くの遺伝子変化が明かになり,高分化型腺癌と低分化型腺癌とで異なった発生過程の存在が示唆されている.遺伝子不安定性は,遺伝子異常の蓄積の基礎となるものであり,高分化型腺癌の前癌性病変である腸上皮化生や腺腫にも認められる.それに加えて,染色体末端に存在するテロメアの短縮は,染色体の不安定性,遺伝子異常,テロメラーゼの再活性化を惹起し癌化に関与する.テロメアDNAを合成するRNA酵素テロメラーゼの活性は,大部分の胃癌とともに前癌性病変においても検出される.接着分子のひとつであるCD44のintron 9を含む異常転写産物も前癌性病変でみられることがある.従ってこれらは胃癌の発生過程の初期に関与するものと考えられるが,それはふたつの組織型に共通した現象である.一方,高分化型では,APC遺伝子の不活化,K-ras遺伝子の活性化,c-erbB2遺伝子の増幅,DCC遺伝子領域の欠失等の遺伝子異常がみられるのに対し,低分化型ではK-sam遺伝子の増幅,カドヘリン/カテニン系の異常などが特徴である.HGF/c-met系と細胞接着分子を介しての癌細胞と問質細胞との相互作用は形態形成に関与する.このような多種の遺伝子異常の蓄積によっておきる胃癌の多段階発生の進行過程においての最初の出来事は,テロメラーゼの活性化あるいは遺伝子不安定性であろう.
キーワード
胃癌, 多段階発癌, 遺伝子不安定性, テロメラーゼ, CD44
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