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日外会誌. 97(3): 215-219, 1996
特集
虚血性心疾患における治療の選択
多枝病変例の長期予後よりみた薬物療法,経皮的冠動脈形成術,冠動脈バイパス術の比較検討
I.内容要旨適正な冠動脈疾患の治療法の選択を行うために,1977年9月より1989年12月までに冠動脈造影検査を行た連続3,635例のうち,冠血行再建の既往例及び急性心筋梗塞を除く左主幹部病変を含まない多枝病変例1,190例を対象とし,その初期治療により3群に分け長期遠隔成績を検討した.急性心筋梗塞死,鬱血性心不全死,突然死を心臓死とし,観察期間中のすべての死,急性心筋梗塞,PTCA,CABGを心事故とした.追跡率は99.3%であった.平均年齢は58.3歳,平均追跡期間は2,419日であった.2枝病変ではMedical 417例,PTCA 178例(24%),CABG 132例(18%)で,3枝病変ではMedical 201例,PTCA 49例(11%),CABG205例(45%)であった.2枝病変,3枝病変共にPTCAで高齢者が多い傾向があり,男性比率,心筋梗塞の既往,完全閉塞血管数は他の2群に比し有意に低かった.累積生存率は,2枝,3枝病変ともにMedicalで他の2群に比し有意に低く,5年で85%(2枝),77%(3枝),10年で67%(2枝),57%(3枝)であった.PTCAとCABGの累積生存率はほぼ同様で5年89%,89%,10年76%,78%(2枝),5年90%,91%,10年78%,77%(3枝)であった.心臓死自由度もほぼ同様の結果であった.心事故自由度は2枝病変ではPTCAが他の2群に比し有意に低く,5年58%,10年30%であった.Medicalでは5年79%,10年50%で,CABGでは5年86%,10年58%であった.3枝病変ではPTCAに加えMedicalも不良で5年63%,72%,10年39%,42%となった.生命予後改善のためには積極的な血行再建が望ましいと考えられた.心事故の発生はPTCAで多かった.従ってPTCA対象病変が多い3枝病変では基本的にCABGを第一選択とすべきである.しかし,再PTCA,CABGがPTCAの主たる心事故であり,CABGに適さない患者の状態と合併症,病変の形態ではPTCAを積極的に行うべきで,適切な善後策をする限りにおいて生命予後はCABGと同等であり,次善の策としてPTCAは有用であると考えられた.
キーワード
long-term prognosis, coronart artery disease, CABG, PTCA, coronary revascularization
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