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日外会誌. 96(12): 815-818, 1995


症例報告

腹腔動脈起始部圧迫症候群を合併した膵頭部癌の1例

1) 東海病院 外科
2) 名古屋大学 医学部第1外科

道家 充1) , 早川 直和1) , 梛野 正人1) , 北川 茂久1) , 小松 俊一郎1) , 二村 雄次2)

(1995年6月21日受付)

I.内容要旨
腹腔動脈起始部圧迫症候群(以下本症)を合併した膵頭部癌の1例を経験した.症例は51歳の女性.上腸間膜動脈造影により拡張した下膵十二指腸動脈,後上膵十二指腸動脈経由で肝動脈が造影された.大動脈造影側方向撮影で腹腔動脈起始部に狭窄を認め,本症と診断した.正中弓状靱帯を切離し,腹腔動脈起始部の圧迫を解除した後に,膵頭十二指腸切除を施行した.術後経過は良好で肝機能検査は正常であった.術後血管造影で腹腔動脈起始部の狭窄は改善されていた.本症の患者に膵頭十二指腸切除を施行する場合,肝血流を維持する十分な対策が必要であると思われた.
本症の原因は“median arcuate ligament''(正中弓状靱帯)による圧迫である.これを“medial arcuate ligament''(内側弓状靱帯)と混同した報告が散見されることを述べた.

キーワード
腹腔動脈起始部圧迫症候群, 正中弓状靱帯, 膵頭十二指腸切除

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