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日外会誌. 96(11): 753-759, 1995


原著

胃組織における Microtubule Associated Protein-1の局在と臨床病理学的所見との比較

獨協医科大学 第1外科

宮地 和人 , 金子 広美 , 森 亮善 , 東 宗徳 , 難波 美津雄 , 砂川 正勝

(1994年3月31日受付)

I.内容要旨
Microtubule Associated Protein's(MAP's)は細胞内器官や核の分裂をつかさどっている微小管がチュブリンから形成される過程に重要な役割を有している蛋白である.Microtubule Associated Protein-1(以下MAP-1)はMAP'sのー種であり,培養細胞での検討でM期には細胞質内に網状に,SおよびG1期では核内に斑点状の局在を認め,増殖を停止した細胞では局在が陰性化した事から細胞の増殖との関連が示唆されている.今回,MAP-1の局在を胃癌組織および胃非癌組織において酵素抗体間接法による免疫組織学的方法を用いて検討した.
対象症例は,早期胃癌6例と進行胃癌42例の計48例で癌部と非癌部を全層に採取した.MAP-1の局在は非癌部では,胃腺管の増殖帯とされている頸部細胞及び腸上皮化生腺管の最下部の細胞の核内にのみ斑点状の局在をまた細胞質内には網状陽性所見を認めた.一方,癌組織では75%の症例で癌組織全体の核内の陽性所見を認めた事から癌組織の方が組織内での増殖細胞の占める割合が多いことが示唆された.組織型別でのMAP-1陽性所見の出現率に関しては管状腺癌の方が未分化型腺癌に比較して高く認められた.しかし,MAP-1の核内局在の有無とリンパ管侵襲および血管侵襲の有無との間には相関を認めなかった.核内染色所見に関して検討すると,癌組織内の核所見が均一であり癌細胞が等しい増殖状態にあると考えられる症例と,核内所見が不均一で癌組織内の個々の細胞が異なる増殖状態にあると考えられる症例があった.この2群間で予後を比較すると,均一な所見を呈した症例では5年生存率が85.7%であるのに対して,各細胞間で所見の異なる不均一な症例では5年生存率が30.0%と有意(p< 0.03)に低くMAP-1の核内局在の均一性の検討が予後の判定に有用である可能性が示された.

キーワード
Microtubule Associated Protein-1, 細胞内骨格, 胃癌, 免疫組織化学

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