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日外会誌. 96(10): 709-717, 1995
原著
乳癌の血管新生についての臨床病理学的検討
I.内容要旨原発性乳癌における血管新生の臨床病理学的意義,およびその客観的評価方法を検討する目的で,1971年から1979年までの原発性乳癌109例に対し,第Ⅷ因子関連抗原染色を代表的切片1枚に行った.そこに含まれた腫瘍の辺縁部について,200倍視野で多数点を検討し,微小血管をカウントした.微小血管数と臨床病理学的因子および10年累積生存率との関係につき検討した.
全症例の平均カウント視野数は35カ所であり,平均微小血管数(/mm
2は39.1±16.1であった.血管侵襲(以下v)別にみると,v(-)例の平均微小血管数は36.4±15.2であったが,v(+)例は44.7±16.6でv(-)例より多く,統計学的に有意差が認められた(p< 0.02).またリンパ節転移(以下n)に関して検討すると,n(-)あるいはn1α例では37.6±15.4であったが,n1β以上例になると45.2±17.4で,n(-)あるいはn1α例より多く,2群間に有意差が認められた(p< 0.05).しかし腫瘤径,組織型,リンパ管侵襲,核異型度,組織学的波及度との間には有意な相関関係は認められなかった.10年累積生存率をKaplan-Meier法を用いて比較検討すると,微小血管数が39未満の群では82.7%であるのに対し,39以上の群では62.4%と予後不良となり,2群間に有意差が認められた(p< 0.03).2群間の背景因子としては,血管侵襲のみに有意差が認められた.微小血管数の多いもの即ち血管新生の盛んなものほど血管侵襲をきたしやすく,血行性転移もおこして予後を不良にすると考えられた.
200倍視野で癌辺縁部の多数点を検索して得られた平均微小血管数は,血管新生の客観的評価方法として有用であり,血管新生は予後因子としても重要であることが示唆された.
キーワード
乳癌, 血管新生, 微小血管, 血管侵襲, 第VIII因子関連抗原染色
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