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日外会誌. 96(8): 569-576, 1995
原著
膵損傷の診断における内視鏡的逆行性膵管造影法の有用性に関する臨床的検討
I.内容要旨膵損傷では膵管損傷の有無が診断や治療上非常に重要な意味をもつ.これによって開腹手術の是非や手術術式までが決定できるからである.膵管損傷の有無を確認するための観血的な膵管造影法が推奨されているが,試験開腹に終わる可能性もあり,開腹自体による合併症も無視できない.著者らは膵損傷の診断に際して,受傷後早期の膵管損傷の確認と不必要な手術の回避を目的として内視鏡的逆行性膵管造影(ERP) を施行した.
腹部外傷36例に対してERPを施行した.このうち3例は不成功例であった.ERPの適応は腹部理学所見,血清アミラーゼ値,CTなどの画像診断や術中肉眼所見で決定した.ERP成功例33例では,ERPを受傷後平均13.7時間で,来院後平均9.6時間で施行した.3例は術中施行例であった.ERP成功例33例中22例が膵損傷症例であった.膵管損傷を14例で確認し,主膵管損傷が12例,膵頭部第一次分枝損傷が2例であった.造影上正常膵管であった19例中8例は膵損傷症例で,他の11例ではアミラーゼ分画や合併臓器損傷に対する開腹手術中の肉眼所見などで膵損傷を否定した.主膵管損傷合併例には全例膵直達手術を施行した.第一次分枝損傷症例は,1例を保存的に治療した結果敗血症で失ったが,後の1例には膵縫合・誘導術を施行して良好な結果を得た.膵管損傷非合併例では,開腹・非開腹に拘わらず膵損傷を保存的に治療したが,膵損傷に由来する合併症を認めなかった.1986年1月以前の膵損傷15例とERP不成功例3例の計18例はERPを施行せずに治療した.18例中15例が手術例であり,この15例中2例(13.3%)が不必要な手術であった.術中ERP施行例を含めて実際にERPを施行した膵損傷の開腹例16例中に不必要な手術はなかった.なお,ERP自体に由来する合併症は1例も経験しなかった.以上から,膵損傷の診断や治療法の決定,不必要な手術を回避する上で,ERPは有用な検査法であると考える.
キーワード
膵損傷, 主膵管損傷, 膵管第一次分枝損傷, 内視鏡的逆行性膵管造影
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