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日外会誌. 96(5): 277-285, 1995


原著

重症敗血症に対する流血中エンドトキシン除去治療
-ポリミキシン固定化カラムによる血液灌流療法-

1) 滋賀医科大学 第1外科
2) 北里大学病院救命救急センター (現 東京大学救命救急部)
3) 千葉大学 医学部救急部・集中治療部
4) 日本医科大学救命救急センター 
5) 昭和大学藤が丘病院救命救急センター 
6) 札幌医科大学 救急集中治療部

小玉 正智1) , 谷 徹1) , 前川 和彦2) , 平澤 博之3) , 大塚 敏文4) , 高橋 愛樹5) , 金子 正光6)

(1993年12月9日受付)

I.内容要旨
目的: PMXは,ポリミキシンBを化学的に固定化した繊維(PMX-F)を充填した血液浄化器である.
方法:全国8施設にて重症敗血症に対しPMXカラムによる2時間の血液灌流(DHP)を施行し,治療前後の種々のパラメーターにより治療効果を検討した.
結果: 42症例に対して61回のDHPを行い,内38例が敗血症性多臓器不全であった.検出菌はグラム陰性菌が25例と,グラム陽性菌が8例あった.42例中22例が生存した.昇圧剤を必要とした33例のうち6例が,治療後減量でき,8例が中止できた.血中エンドトキシン濃度が10pg/ml以上(n=50:37例)の検体において治療直前濃度は85.0±27.2pg/ml(mean±S.E)から治療後57.5±28.4(n=50)(p < 0.01)に,翌日には28.2±4.4 (n = 23:18例) (p< 0.01)に低下した.DHP開始30分後のPMX入口より出口の濃度が有意に低下した.解熱効果では,治療前体温38℃以上(n=21)の13症例において,治療直前38.9±0.2が直後に38.4±0.2に,翌日には38.0±0.2℃となった(p< 0.01).治療直前血圧は125±4.7mmHg(昇圧剤(+),n=28: 21例)が,治療直後133±4.8に,翌日には128±4.7mmHg(p< 0.01) と共に有意に上昇し,90mmHg未満の症例も直後,翌日と有意に上昇した.DHP治療前の心係数が6.0±0.2min/mc2(n=19) の検体群15例は翌日5.5±0.3 (p< 0.05) と有意に正常化した.治療直前の体血管抵抗が647±36.5dyne・sec・cm-5の検体群14例は治療直後729 ±51.4,翌日には839 ±71.4dyne・sec・cm-5(p< 0.01)と有意に正常化した.治療直前の酸素消費量係数(VO2I)が97.5±9.2の140未満の12症例(n=12)は,治療直後145.8±21.2 (p< 0.05),翌日134±16.3ml/min/m2(p< 0.01)と共に有意に改善が認められた.
結論: PMXによる治療は流入エンドトキシンが原因となる種々の症状を改善し,重症の敗血症症例に対し速やかに効果を発揮できた.

キーワード
敗血症性ショック (septic shock), 内毒素 (endotoxin), 多臓器不全 (multiple organ failure), ポリミキシン B (polymyxin B), 血液灌流 (hemoperfusion)

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