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日外会誌. 96(4): 223-227, 1995


原著

肝細胞癌術後再発の検討

千葉大学 医学部第2外科

中市 人史

(1992年12月21日受付)

I.内容要旨
肝細胞癌の肝切除術再発に関して,病理組織学的見地および無再発生存期間より解析を行い,予後規定因子を評価した.対象は1979年6月より1989年12月までに千葉大学第二外科にて治癒切除を施行した肝細胞癌のうち,直死,入院死および他病死を除く追跡可能な症例119例,男性105例,女性14例,平均年齢56.1士8.2歳である.なお全症例とも術後から再発確認までの期間未治療である.切除肝において,腫瘍の最大割面を含む全面について,4μmのパラフィン包埋薄切標本を作成し,病理組織学的項目を検索した.検索項目は,1)腫瘍径,2)腫瘍数,3)組織分類,4)細胞異型度,5)被膜形成,6)被膜内浸潤,7)隔壁形成,8)隔壁内浸潤,9)血管内浸潤,10)娘結節,11)壊死率である.無再発生存率はKaplan-Meier法,多変量解析はCox比例ハザードモデルを用い,統計処理はSASによりおこなった.術前療法(TAE)の有無および手術における肝切離面の癌浸潤(tw)の有無を無再発生存率で比較すると,共に有意差は認められなかった.この条件のもとに病理組織学的項目と無再発生存期間により多変量解析を行った結果,p< 0.01で腫痛径が予後因子として有意であった.さらにハザード比の検討より腫瘍径が4cmを境界に再発予後に影響を与えた.腫蕩径が4cm以下の肝細胞癌は,被膜内浸潤が31.1%,血管内浸潤が31.1%であるが,それぞれの有無に関わらず無再発生存率に有意差は認められず,さらに腫瘍径2cm以下と4cm以下の肝細胞癌の無再発生存率を比較しても有意差は認められなかった.治癒切除後の肝細胞癌の発生において,再発か再度発癌であるかの判定は困難であるが,病理組織学的項目と無再発生存期間の解析から,腫痛径が予後因子として有意であり,さらに腫痛径が4cmを境界に無再発生存率に影響を与える結果となった.

キーワード
肝細胞癌, 術後再発, 予後因子, 多変量解析, Cox 比例ハザードモデル

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