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日外会誌. 95(3): 187-191, 1994
原著
甲状腺悪性リンバ腫の超音波診断
I.内容要旨甲状腺悪性リンパ腫は比較的稀な疾患であり,その術前診断は従来必ずしも容易ではなかった.一方甲状腺疾患に超音波診断法導入以来,特に甲状腺分化癌の診断能は飛躍的に向上してきた.今回われわれは甲状腺悪性リンパ腫の超音波像ならびにその診断的意義について検討した.対象: 1983年から1991年までの9年間に信州大学医学部第2外科で術前に超音波検査を行った後,手術が施行され,病理組織学的に悪性リンパ腫と診断された10例を対象とした.成績: 10例中超音波検査により悪性リンパ腫と術前診断されたものは3例のみであった.残り7例のうち5例は甲状腺癌, 1例は嚢胞変性を伴う腺腫様甲状腺腫,1例は慢性甲状腺炎と診断した. 10症例中, 9例が低エコー領域を示す結節型,1例は周囲に残存する甲状腺組織を認めないび漫性型であった.結節型はいずれも周囲甲状腺に比較し,内部エコーレベルが著しく低下しており,その占拠性は不規則であり,腺腫様甲状腺腫と診断した1例以外は,悪性リンパ腫の診断は得られないまでも悪性病変と診断し得た.び漫性型の1例は周囲甲状腺組織との比較が不可能であり,慢性甲状腺炎と診断した.一方,他の診断法との比較では,
67 Gaシンチグラフィーで取り込みを認めなかった2例はいずれも腫瘍径が2cm以下であったが,この2症例について超音波検査では1例は悪性リンパ腫, 1例は甲状腺癌と診断とした.結語:超音波検査単独で甲状腺悪性リンパ腫と診断することは困難であるが,本疾患の大半を占める結節型の症例については少なくとも悪性病変の疑いを持つことが可能である.
67 Gaシンチグラフィーでは偽陰性となる小結節については残存する周囲甲状腺組織との対比が可能であり,むしろ診断に適している.穿刺吸引細胞診との併用により,その診断能が高まると思われる.
キーワード
甲状腺, 悪性リンパ腫, 超音波検査, 67Ga シンチグラフィー
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