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日外会誌. 93(8): 833-841, 1992
原著
ラット再生肝における過酸化脂質の検討
I.内容要旨肝切除後の再生肝には,一過性に細胞障害作用のある過酸化脂質の増加することが知られている.これには,活性酸素が関与しているが,未だ明確な機序や影響については報告されていない.今回,ラットで70%肝切除を行い,術前, radical scavengerとして, DL-α-Tocopheryl-L-Ascorbic acid 2-0-phosphate diester (以下EPC) -α-Tocopherol :アスコルビン酸6: 4比の誘導体-を5mg/kg(IV)投与した群と無投与群で肝組織中の過酸化脂質などの変動を比較検討した.両群とも,術後24時間後に再生肝組織中の過酸化脂質が最大値を示したが,投与群では有意に抑制された.また,血清中の過酸化脂質,Glutamic pyruvic transaminase (以下GPT) も投与群で有意に抑制されたが,血中ケトン体比に関しては有意差のある変動はなかった.また投与群では,再生肝の初期の蛋白合成能の指標であるTymidine kinaseが24時間後では有意に高く,肝再生率では48時間以降に両群間に有意差が認められた.組織学的な検討では形態的には両群に差はなかったが, PAS染色では投与群において早期にグリコーゲン顆粒が認められ,糖代謝の回復が早められたものと考えられる.このことは,残存肝のミトコンドリア内のエネルギーの回復も早められたことを示唆しており, DNA合成に必要なエネルギーをそれだけ早く供給できるものと思われる.強力な体内抗酸化剤であるEPCの投与により肝切除後の過酸化脂質が抑制され,その結果肝細胞障害が軽減されるだけでなく, ミトコンドリアのエネルギー機能の回復や,糖代謝,蛋白合成能の回復を早めることにより,肝再生がより早く,有利に進められたものと思われる.
キーワード
肝再生, 過酸化脂質, フリーラジカル, scavenger, Tymidine kinase
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