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日外会誌. 93(6): 632-638, 1992


原著

心筋保護に対するcrystalloid cardioplegic solutionの酸素加,DBcAMP付加の影響

産業医科大学 第2外科

石倉 義弥 , 小田桐 重遠 , 嶋津 明 , 平尾 大吾 , 渡辺 浩行 , 波戸岡 俊三 , 浜田 正勝

(1991年3月15日受付)

I.内容要旨
我々が心臓手術中に使用しているGIKを主体にしたCCSにDBcAMPを加え,更に酸素加することにより,心停止中の心筋保護効果を高めることが出来るかどうかを臨床的に検討した.単純なCCSを使用したI群15例とDBcAMPを加えたものII群15例,更に酸素加したものIII群15例に分けて検討した.酸素加CCSはPO2 790mmHg, PCO2 26.5mmHg, pH7.85であった.症例の疾患は冠動脈疾患と弁膜疾患で,3群共ほぼ同様であった.年齢も3群間でほぼ同様であった.灌流条件ではIII群でやや灌流時間,心停止時間が長く,CCS量が有意に多かった.心機能はIII群で術後CI及びdouble productでII群より有意に(p<0.05)改善が見られた他は有意差はなかった.心筋障害を表す血清酸素学的検査CPK, CPK-MB,ミオグロビンでは3群間に有意差は見られなかった.心筋代謝の指標としての冠静脈洞血のL/P比はIII群で術前から高値にあったが,ポンプ後はポンプ前値よりIII群でのみ低値に保たれ,大動脈遮断解除後の冠静脈洞血のBEもIII群のみ+のアルカロージスを保っていた.又,Refunction timeはI群,II群,III群の順に短く,III群はそれぞれに対し有意に(p<0.05, 0.01)最短であり,ポンプ後の機能回復が良好であった.以上のことからDBcAMP加CCSにPCO2を余り下げずにPHを至適pH 7.8前後に保つように酸素加することにより術中心停止中における心筋保護効果をより高めることが可能であると思われた.

キーワード
心筋保護, crystalloid cardioplegic solution, DBcAMP 加心筋保護液, 酸素加心筋保護液

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