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日外会誌. 93(6): 578-588, 1992
原著
食道癌切除後における上部食道括約筋機能に関する研究
I.内容要旨食道癌切除症例において残存頸部食道壁伸展刺激に対する上部食道括約筋(以下UES)の反応を検討した.対象は切除術が行われた胸腹部食道癌30例で,郭清の範囲により非拡大郭清群と拡大郭清群とに,また反回神経麻痺の有無により麻痺群と非麻痺群に分け,上部消化管に異常のみられない健常人33例を対照群とした.食道内圧検査を用いバルーンによりUES肛門側の食道壁に伸展刺激を加え,静止時上部食道括約筋圧(以下UESP),および照下に誘発される収縮波の最高圧(上部食道括約筋収縮圧,以下UESC)を測定した.食道壁に伸展刺激を加えると,対照群,非拡大郭清群ならびに非麻痺群では,UESPおよびUESCはバルーン非拡張時に比して有意に(p<0.01, p<0.05)上昇したが,拡大郭清群および麻痺群ではUESPおよびUESCに有意な変化はみられなかった.また各群間で比較すると,バルーン非拡張時のUESPおよびUESCは各群間に有意差がみられなかったが,食道壁に伸展剌激を加えると,拡大郭清群および麻痺群のUESPおよびUESCは対照群に比していずれも有意に(p<0.01, p<0.05)低値であった.UESは不髄意に緊張を保ち消化液や食物の逆流を防止しているが,拡大郭清群ならびに麻痺群では壁伸展刺激に対するUESの反応は低下しており,食道癌術後の嚥下性肺炎の一因であることが示唆された.
キーワード
上部食道括約筋, 食道癌, 食道内圧検査, 反回神経麻痺, 嚥下性肺炎
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