[
書誌情報]
[
全文PDF] (942KB)
[会員限定・要二段階認証][
検索結果へ戻る]
日外会誌. 93(5): 533-539, 1992
原著
呼吸器外科領域での有茎大網被覆術における腹部合併症の検討
I.内容要旨有茎大網被覆術の腹部合併症については,現在まで報告は少なく,詳細な検討はされていない.そこで有茎大網被覆例13例を大網被覆を行っていない右肺全摘除例9例及び胆嚢摘除例22例と比較し腹部合併症,消化管機能の術後回復について検討した.
本術式の施行理由は, 1)創傷治癒促進のための予防的施行4例, 2) 感染症2例, 3)気管支瘻7例であった.
大網被覆例では,術後排ガスまでの時間及び経口摂取開始までの時間は,右肺全摘除例よりは遅延したが,胆嚢摘除例との間には有意差は認められず,消化管機能は大網被覆例でも術後2~3日で回復する事が確認された.しかし大網被覆例では経口摂取再開後に7例 (54%) で上腹部膨満感と腹部膨満が出現し,数日から2週間程継続した.また3例 (23%) で上腹部不快感が認められた.開腹創の合併症も大網被覆例で高頻度に認められ,上腹部正中切開創の離開が発生した.創の離開は感染症例 (2/2 : 100%),気管支瘻例 (2/7 : 28%) で多く見られた.
術後の上部消化管造影では,高頻度 (4/7 : 57%) に有茎大網片の移植に伴う胃前庭部の変形が認められた. しかしこの変形は経口摂取開始後の腹部膨満発生例とは必ずしも一致していないことより,腹部膨満の原因である胃排出機能の低下には,右胃大網動静脈の釣り上げによる物理的な狭窄以外の因子が関与していることが示唆された.
キーワード
有茎大網片, 大網被覆術, 腹部合併症, 呼吸器外科領域, 気管支瘻
このページのトップへ戻る
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。