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日外会誌. 93(4): 345-351, 1992


原著

加齢時手術侵襲下における高カロリー輸液の代謝への影響に関する実験的検討

神戸大学 医学部第1外科

宇佐美 真 , 大柳 治正 , 笠原 宏 , 斎藤 洋一

(1991年2月18日受付)

I.内容要旨
老人外科領域での高カロリー輸液(TPN)時の代謝変動を実験的に検討した. 100週齢を越える極端な高齢ラット(老齢群)と7~8週齢の若年ラット(若年群)を用い,開腹手術後に3日間のTPNを行った.輸液は,侵襲下で有効とされるグルコース, フルクトース,キシリトールを4: 2 : 1とする混合糖質液(GFX) と分岐鎖アミノ酸(BCAA)を30%含む10%アミノ酸液を200ml/kg/day, 182cal/kg/day, Non protein cal/N比148に併用し, 1, 3日目に犠死させ,血液,尿生化学,肝組織成分を測定し, 2群間の比較を行った.
老齢群では, full strengthの約2/3のカロリー投与で,加齢により増加していた肝臓の含水量が輸液後に低下し,他方,体重は増加し, 3メチルヒスチジン排泄量の低値,窒素バランスの改善,及び上昇した血中脂質の低下が,若年群に比し有意に認められた.肝組織成分は,蛋白,グリコーゲン, トリグリセライド量の増加を認めており,血糖も低く,蛋白アミノ酸代謝,糖代謝,脂質代謝のいずれでも改善を認め,老齢群での術後の異化の亢進を抑制したと考えられる.複合糖質液であるGFX液と高濃度BCAAからなる高カロリー輸液は,極端な高齢者の術後侵襲下でも有効に利用されることが明らかになり,代謝改善に効果を示した.

キーワード
高齢者, 高カロリー輸液, 術後代謝, フルクトース, キシリトール

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