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日外会誌. 93(3): 295-299, 1992


原著

乳癌予後因子としての胸骨傍リンパ節転移の意義について

1) 金沢大学医学部付属病院 手術部
2) 金沢大学医学部付属病院 第2外科
3) 金沢大学医学部付属病院 病理部

野口 昌邦1)2) , 太田 長義2) , 小矢崎 直博2) , 谷屋 隆雄2) , 宮崎 逸夫2) , 水上 勇次3)

(1991年1月21日受付)

I.内容要旨
浸潤性乳癌207例を対象として,腋窩および胸骨傍リンパ節転移と臨床所見およびDNA ploidyの関係を検討すると共に,生存率に及ぼすこれらの予後因子の影響を一変量および多変量解析で検討した.その結果,(1) aneuploidの頻度は腋窩および胸骨傍リンパ節転移と有意に相関しており,特に胸骨傍リンパ節転移の有無でそれぞれ96%,43. 7%であった.(2)ー変量解析による10年生存率は腫瘤径,腋窩リンパ節の状態,腋窩リンパ節転移,胸骨傍リンパ節転移およびDNA ploidyで有意の差を認め,年齢,閉経状態,病理組織型および組織学的悪性度で有意の差を認めなかった.しかし,(3) 多変量解析では腋窩リンパ節転移および胸骨傍リンパ節転移が有意な予後因子であり,腫瘤径,腋窩リンパ節の状態およびDNA ploidyは独立した予後因子として認められなかった.一方,(4)腋窩リンパ節転移を腋窩の触診所見から判断するとfalse positiveやfalse negativeがそれぞれ23.8%,21. 7%に存在し,また胸骨傍リンパ節転移を腋窩の触診所見および臨床病期や腫瘤の占拠部位から推定することも困難であった.しかし,(5)胸骨傍リンパ節の転移部位を検討すると,第一肋間と第二肋間のリンパ節転移率はそれぞれ86%,81%と高率であり,両肋間を合わせた転移率は100%であった.従って,乳癌手術の際に腋窩リンパ節の郭清と共に第一と第二肋間の胸骨傍リンパ節の生検を行うことが,術後の予後を知る上に重要であると考えられた.

キーワード
乳癌, 予後因子, 胸骨傍リンパ節転移

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