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日外会誌. 93(2): 197-207, 1992


原著

MNMSに関する実験的研究
ー実験モデルの作成と予後の判定に関与するパラメーターについて

国立循環器病センター研究所 
国立循環器病センター研究所 心臓血管外科
千葉大学 医学部第1外科

大貫 洋子 , 安達 盛次 , 武内 重康 , 安藤 太三 , 中島 伸之 , 奥井 勝二

(1990年12月14日受付)

I.内容要旨
ヒトのMyonephropathic metabolic syndrome (MNMS)の病態(高カリウム血症,代謝性アシドーシス)を示すイヌ実験モデルを作成するとともに,諸酵素と骨格筋組織Pco2, pHを測定し, これらがMNMS発症の予測因子として有効かどうかを検討した.モデルの妥当性の検討のため,次のような4群の実験モデルを考案した.
1群-腎動脈以下膝窩動脈の分枝を全て結紮,内外腸骨動脈,大腿深部動脈を遮断, 1週間経過観察(N=5)
2群-同上, 6時間遮断,再灌流(N=12)
3群-同上, 6時間の虚血,再灌流+浅腹壁動脈,腸腰動脈の遮断(N=13)
4群-同上, 6時間の虚血,再灌流+腹部筋肉の横断(N=5)
1群では, MNMSの症状で死亡したイヌはなかった. 2群と3群で, MNMSの発症率はそれぞれ50%, 69%と, 3群が実験モデルとして一番適当と思われた. 4群では遮断解除前に80%が死亡してしまい,モデルとしては不適当であった.下肢の短時間の虚血,再灌流でのMNMSの発症には側副血行路の遮断,虚血の筋肉量が大きな因子となると思われた.次に,動静脈血pH,BE, K, イヌ大腿筋Pco2, pH, 血清GOT, LDH, CPK, ALD, Cr, Mbを測定し,それぞれのパラメーターの平均値でMNMS(+), (-)群間で各時相における有意差があるかどうか,またこれらと再灌流後の動静脈血のK, BE, pHと相関があるかどうかを検討した.両群間における有意差は,生化学データでは,再灌流後1時間からの, GOT, CPK, LDH, Crで,また遮断3時間後からの組織Pco2, pHにおいて見られた. MNMSの指標として再灌流6時間後のGOT, LDH, CPK, Crと遮断6時間後の組織Pco2, pHを選び出し判別分析を行ったところ,その判別率は前者のみでは60.0%であったが,後者を加えることにより93.3%と上昇した.これにより諸酵素の測定と共に,再灌流直前の骨格筋組織Pco2, pHの測定は, MNMSの予後の判定に有用であると考えられた.

キーワード
MNMS, 組織 Pco2, 組織 pH

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