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日外会誌. 93(2): 169-176, 1992


原著

腫瘍随伴性膵炎におけるラ島細胞の量的変化と耐糖能の関連について

京都大学 医学部第1外科
*) 京都大学 医療短期大学部

加治 弘 , 井上 一知 , 宮下 正 , 高橋 清之*) , 内田 耕太郎*) , 戸部 隆吉

(1990年12月6日受付)

I.内容要旨
膵頭十二指腸領域の悪性腫瘍においてそれより尾側膵に生じる慢性膵炎のラ島における内分泌細胞の量的変化を検索し,さらにそれらの変化と耐糖能の程度との相関関係について検討した.膵頭部癌もしくは乳頭部癌のために当科にて膵頭十二指腸切除あるいは膵全摘が行われた21例を対象とし,それらから得られた膵体部の標本により,それらの症例を線維化の程度により4段階に分類した(Grade 0~Grade III).さらにそれらの切片におけるB細胞, A細胞, D細胞,およびPP細胞を免疫組織化学的手法(間接法, PAP法)により同定し,それぞれの細胞の占める比率を算出した.さらに術前に行われた経口ブドウ糖負荷試験(OGTT) と,同時に行ったインスリン反応試験より耐糖能の指標を求め(ΔIRI/ΔBS, ΣIRI/ΣBS, ΣΔIRI/ΣΔBS) ,内分泌細胞の量的変化との相関関係について検索した.最も線維化の強い膵組織(Grade III)においてはB細胞比は有意に減少し(p<0.01),かつA細胞比は有意に増加していた(p<0.01).また耐糖能を表わす指標の中ではΣΔIRI/ΣΔBSがGrade IIIにおいて有意な低下(p<0.05)を示した.また内分泌細胞の量的変化との関係についてはB細胞比はΔIRI/ΔBSおよびΣΔIRI/ΣΔBSとの間に有意な正の相関関係を認め(p<0.05),さらにA細胞比はΣΔIRI/ΣΔBS と有意な負の相関関係を認めた(p<0.05) .今回の研究により腫瘍随伴性膵炎においてはB 細胞の減少とA 細胞の増加が見られ,さらにそれらはΣΔIRI/ΣΔBS やΔIRI/ΔBSに反映されることが示唆された. このことは膵頭十二指腸領域癌に対する膵切除後の耐糖能変化の把握,ひいては術後管理の面からも貴重な情報をもたらすものと考えられる.

キーワード
膵頭部癌, 乳頭部癌, 耐糖能, 免疫組織化学

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