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日外会誌. 93(2): 119-127, 1992


原著

外科侵襲下の高カロリー輸液 (TPN) におけるエネルギー及びアミノ酸至適投与量の検討

千葉大学 医学部第1外科

藤崎 安明 , 田代 亜彦 , 真島 吉也 , 山森 秀夫 , 奥井 勝二

(1990年12月5日受付)

I.内容要旨
消化器手術術後の高カロリー輸液における,エネルギー及びアミノ酸の至適投与量を,食道癌手術,および胃・大腸手術症例,計52例を対象に検討した.
侵襲の指標として用いた尿中総カテコールアミン排泄量は,他の侵襲ホルモンや消費熱量と有意の相関をもって変動し,また栄養投与量の影響を受けず,侵襲の指標として有用であった.術後第3病日の尿中総カテコールアミン排泄量の範囲(Mean±1SD)は, 胃・大腸手術で3.61±1.38μg/kg•day,食道癌手術で7.56±1.71μg/kg•day であった.
そこで,尿中総カテコールアミン排泄量を侵襲の指標として窒素平衡との関係を見ると,両者は強い負の相関(p<0.01)を示し, しかも,その相関が栄養投与量の違いにより異なることから,侵襲の大きさ,栄養投与量,窒素平衡の関係を検討することにより,至適投与量の決定が可能となった.
即ち, 胃・大腸手術術後では,投与エネルギーの増量,アミノ酸の増量は共に蛋白代謝の改善に効果があり,これは蛋白代謝回転より見ると,分解は変化せず,合成の増加によるものであった.一方,侵襲が更に過大になると(食道癌術後早期など),栄養投与量を変えても蛋白代謝の改善効果が少なかった.
以上より,消化器手術術後のTPN において, 40kcal/kg•day 投与下ではアミノ酸1. 5g•protein/kg•day 以上で,またアミノ酸2.0g•protein/kg•day 投与下ではおよそ35kcal/kg•day以上が投与の目安になると思われた.

キーワード
外科侵襲, 高カロリー輸液, 尿中総カテコールアミン排泄量, 至適栄養投与量

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