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日外会誌. 91(10): 1554-1559, 1990
原著
メチシリン・セフエム耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の外科病棟内感染の解析と MRSA の毒素産生性
I.内容要旨一般外科,小児外科,脳外科が所属する外科系混合病棟内で,最近2年間にMRSA感染症がしばしば発生し,病棟内院内感染が示唆された.そこで,同期間におけるこれら外科系3科入院患者の臨床分離黄色ブドウ球菌中のMRSAの割合と月別のMRSA感染症患者数の推移を検索し,本菌感染症の実態を調査した.つぎに臨床分離12株,保菌者分離10株,病棟環境分離1株,計23株のMRSAのコアグラーゼ型,プラスミドDNAパターンを検索し,細菌学的にMRSAの同一性を検討した.また,エンテロトキシン産生性と型別,Toxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)産生性を検索し,MRSAの毒素産生性について検討した.結果は以下のごとくであった.1.臨床分離黄色ブドウ球菌中のMRSAの割合は,3科全体では247株中204株(83%)に達し,3科いずれも高率であった.2.MRSA感染症患者数の検討では,検索期間中,3科にわたる2回の発症多発を認め,1科のMRSA重症感染症の発症や感染症多発に他科の本菌感染症が続発していた.3.コァグラーゼ型は23株中22株がII型であった.プラスミドDNAの解析では,2種の発症流行株を認めた.4.毒素産生性は,エンテロトキシンが23株中21株,TSST-1が23株中20株と高率に有していた.エンテロトキシン型はCが多数を占めた.
以上より,検索期間中のMRSA感染症はエンテロトキシン(特にC),TSST-1産生性を有する本菌院内感染症であることが確認された.MRSA感染症は全国的に増加しているが,本菌感染症の多くは今回の検討のごとく院内感染が原因と考えられる.また,エンテロトキシン,TSST-1などの毒素産生性を有するMRSAの院内感染は重症感染症を多発させる可能性があり,本菌院内感染とその防止に注意をはらう必要がある.
キーワード
methicillin-cephem resistant Staphylococcus aureus (MRSA), 院内感染症, プラスミド DNA, エンテロトキシン, Toxic shock syndrome toxin-1 (TSST-1)
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